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これまでは不動産の相続登記は義務化されていませんでしたが、2021年12月14日の閣議決定により今後は義務化されることとなりました。2024年4月1日に施行されるものとなっており、不動産の所有者が死亡し相続が発生した場合に相続人の名義へ変更する手続きをしなければならなくなります。
相続登記の義務化についての要点は、以下の通りです。
・相続登記義務化は2024年4月1日より施工されます。
・相続で不動産を取得した事を知った日から3年以内に正当な理由なく登記・名義変更手続きを行わなかった場合、10万円以下の過料の対象となります。
・住所変更した場合にも不動産登記が義務化され、2年以内に正当な理由なく手続きしなかった場合、5万円以下の過料の対象になります。
・法改正以前に相続や住所変更が発生した不動産についても義務化の対象となっており、できるだけ早く登記を行う必要があります。
相続登記とは、土地や建物・マンションなどの不動産の所有者が死亡した際、相続人の所有名義に変更する手続きのことをいいます。登記上の所有者を名義変更するためには、法務局に対して所有権移転登記の申請を行うことになります。このような登記申請を一般的に「不動産の名義変更手続き」というように呼びます。所有権移転登記には売買や贈与などさまざまな発生原因がありますが、死亡した者から相続によって名義変更を行う手続きを相続登記と呼びます。
現在の法制度では相続登記に義務がなく、仮に相続が発生したとしてもすぐに手続きをしないケースが多くなっています。これにより長い期間を経て土地の所有者が誰であるかがわからないという事態・問題が発生しており、所有者が分からないことによって売買などの取引ができないため再開発や公共事業、周辺環境への対応などへの支障となっていました。これらのような社会的問題を背景とし、相続登記の義務化が進められたというわけです。
実際に「所有者不明土地問題研究会(一般財団法人国土計画協会)」という団体も設立されるなどその問題の大きさは広く認識されつつありますが、2016年の地籍調査では不動産登記簿上で所有者の所在が確認出来ない土地は全体の約20%もあると報告されています。このままでは今以上に所有者の所在不明不動産が増加するという試算もあったことから、今回法制度の改正によって義務化することでこれらの問題を解決しようという狙いがあります。
相続の開始時期は、「相続の開始及び所有権を取得したことを知った日」とされています。そのため、不動産の相続が発生したことを認識した場合には、速やかに相続登記の手続きを行うようにしましょう。
世の中にある「義務」は、努力義務など罰則が付随しないものもあります。しかし相続登記の義務化は明確な罰則が定められています。相続によって不動産を取得した場合、正当な理由なく3年以内に登記申請をしないと10万円以下の過料の対象となります。
相続登記義務化の罰則は「正当な理由なく登記手続きを行わない場合」とされていますが、この正当な理由とはどのようなものがあるでしょうか。相続の場合、個別の事情によって3年以内に登記申請を行うことが難しい場合があります。なお、法務省のホームページでは以下のような例が示されています。
・数次相続が発生して相続人が極めて多数に上り、戸籍謄本等の必要な資料の収集や他の相続人の把握に多くの時間を要するケース
・遺言の有効性や遺産の範囲等が争われているケース
・申請義務を負う相続人自身に重病等の事情があるケース など
今までは遺言書などで不動産の遺贈を受けた場合、受けるもの以外の法定相続人全員(遺言執行者がいる場合はその者)の協力がなければ登記手続きができませんでしたが、2023年4月1日からは遺贈を受けた者のみで遺贈による名義変更手続きができるようになりました。そのためこの場合には遺贈を受けた段階で速やかに変更手続きを行いましょう。
遺産分割協議を行う場合、その成立までには一定の時間を要します。速やかに相続登記が出来ない場合には相続人申告登記(仮称)を利用することで相続登記義務を免れることができます。後日遺産分割協議が成立した場合、遺産分割の日から3年以内に相続登記の手続きを行うようにしましょう。
遺産分割協議がまとまらない場合には、前項で解説した通り相続人申告登記(仮称)を利用して義務を免れることが可能です。その後法定相続となった場合には、改めて法定相続分の通りに相続登記を行うようにしましょう。
今回の法改正で気を付けなければならないのは、改正以降の相続だけでなくそれまでに発生した相続も対象となる点です。過去に相続を受けて未だに手続きを行っていない場合、改正法の施工日から3年以内に相続登記を行わなければいけません。ただし、施行日以前に相続が発生していてもそれを「知った日」が施行日以降の場合は同日から3年以内に手続きする必要があります。
長期間相続登記をせずに放置し続けている場合、相続人の数が増えてしまい権利関係が相当複雑になってしまいます。元の所有者が無くなって3人の子供に相続するような場合では、その3人の子供が相続登記をしないまま死亡してしまうとそれらの子(元の所有者の孫)が相続人となってしまいます。さらにそれらの子が相続人に・・・と雪だるま式に相続人が増えていくと、相続人全員で合意して相続登記を行うことがほとんど不可能に近いものになってしまうでしょう。
相続登記をしない場合、所有権はもとの所有者に帰属します。不動産を売却したり担保設定するためには所有者が一致していなければいけませんので、相続登記をしないままに手続きを進めることはできません。「今必要がないから」とそのまま放置してしまうと、いざ必要になった時に手間になってしまったり、他の相続人が行方不明になったりと相続手続きができなくなってしまうリスクがあります。
相続人の中に借金を抱えているような人がいる場合、より注意が必要です。相続人の債権者は相続人に代わって法定相続に基づく相続登記を申請し、債務者である相続人の持ち分を差し押さえることが可能です。また、相続人自身も持ち分の売却をしたり担保提供を行うことが可能であるため、相続登記を怠って放置していると相続人ではない第三者が権利関係に入ってきてしまう可能性があるのです。そのため、権利関係は登記手続きをきっちりと行ってはっきりさせておくことをおすすめします。
ビジネス場面などで触れる方を除き、「登記」と聞くと何だか難しそうというイメージを持つ方がほとんどではないでしょうか。登記は不動産の権利関係を公示するために重要な制度であるため、法律によって細かくルール化されています。そのため必要資料も多岐に亘りますし、申請書などはきっちりと記入する必要があります。この事から「手続きが難解・面倒」などの理由に加え、今までは罰則も無かったことから放置されるというケースが多くなっていました。
相続登記を行うにあたっては、登録免許税に加え各種証明書の発行手数料といった諸費用がかかります。また、これらを司法書士のようなプロの専門家に依頼する場合、報酬も発生するためより多くのコストがかかります。なお、登録免許税は登記申請時に収める税金であり相続登記では固定資産税評価額の0.4%かかります。これらの支出が発生することから、罰則がないのであればわざわざお金を払って申請することをしない、という方が多くなっています。
遺言書がなく遺産分割協議で相続を決める場合には、相続人全員の合意が必要になります。相続人が少なく関係も良好であれば特に問題はありませんが、関与している人数が多いケースや関係性が良くないケースでは関係者全員への連絡や合意に関する調整など相当の労力が必要になるでしょう。意見の対立や手続きへの協力が得られない場合など、なし崩し的に放置状態になっていることも少なくありません。
遺言による相続登記の場合、死亡した方の住民票、固定資産税評価証明書、遺言書の3点が必ず必要となります。また、不動産を取得した相続人については戸籍謄本と住民票が必要になりますので、こちらも準備しておきましょう。死亡した方の戸籍謄本も必要になりますが、死亡時の戸籍のみで充足する場合もあります。
遺産分割による相続登記を行う場合、死亡した方の出生から死亡までの戸籍謄本が必要になります。また、死亡した方の住民票の除票・相続人の戸籍謄本・相続人の印鑑証明書・固定資産税評価証明書・遺産分割協議書がそれぞれマストで必要になります。さらに不動産を取得した相続人に関しては相続人の住民票も必要になります。
法定相続によって相続登記を行う場合、遺産分割協議書のケースと同じく死亡した方の出生から死亡までの戸籍謄本が必要になります。他にも死亡した方の住民票の除票や相続人の戸籍謄本と住民票、固定資産税評価証明書が必要になります。ここで紹介した必要資料はあくまでも一般的なケースであり、事例によっては他の資料を提出する必要があることもありますので、法務局に確認するようにしましょう。
不動産の相続登記はどこの法務局でも行えるものではなく、不動産の所在地を管轄している法務局で申請する必要があります。申請を行う方法としては法務局の窓口で手続きを行うほか、郵送による申請やオンラインでの申請手続きがあります。郵送申請では書類の不備などを細かく確認できないことから修正・訂正対応が困難であること、オンライン申請では電子証明書などの取得といった手間があることから一般的には司法書士などの専門家に依頼するケースが多いです。
相続登記の手続きにおいては、「死亡した方の出生から死亡までの戸籍謄本・住民票・固定資産税評価証明書などの書類を集める」「登録免許税の税額を計算し、登記申請書の作成を行う」「申請書と必要書類を法務局に提出し、登録免許税の納付を行う」という流れで進められることが一般的です。ただし、登記手続きの内容によって必要書類や申請書の内容も変わってきますので、管轄の法務局にあらかじめ確認を入れるようにしましょう。
前項でも説明した登録免許税についてですが、相続においては対象不動産の固定資産評価額によって税額が変わります。登録免許税の税率は0.4%となっており、固定資産評価証明書に記載されている金額の千円未満を切り捨て、税率の0.4%を乗じた額の百円未満を切り捨てた金額を納付することとなります。仮に3千万円の不動産で合った場合には、3千万円×0.4%=12万円の登録免許税を収める必要があります。
登記変更手続きそのものは自分たちでも行うことが可能ですが、それぞれの手続きにどういう義務やリスクがあるのかなどはプロの専門家でもない限り把握することは難しいでしょう。そのため、不動産所有権の移転や相続など、何らかの手続きをしなければいけないような状況に至った場合、登記申請のプロである司法書士に相談することをおすすめします。きっちりと諸手続きを行うことで、必要のない罰則を受けたり過料を支払わなければならないような状況を回避するようにしましょう。
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不動産 相続の 手続費用 |
¥45,000~ | ¥58,000~ (※1) |
¥68,000~ (※2) |
¥104,500~ |
公式HP |
※初回の相談が無料であり、電話やZoomでも手続きが進められると公式HPで明記している京都市内の司法書士事務所を掲載しています(2021年4月調査時点)。
※各費用は公式HPに掲載されている最低限の料金です。家族構成や手続きの複雑性によって変化する可能性があります。
※公的手続きの実費として納める費用、出張時の立ち合い費用などの諸経費は含まれていません。
※費用は2021年12月の情報です。
※1:2021年12月時点で、公式HPに税表記はありませんでした
※2:2021年12月時点で、公式HPで価格を確認できませんでした