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相続や相続税の申請に関する法改正 2022年版

2019年7月1日より改正された相続法が施行されています。どのような変更が行われたのかについて解説しています。

近年の相続に関する変化

相続税の申告・納付期限の延長申請ができるように

相続税の申告・納付期限は、「相続開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内」に行うと定められています(通常は相続開始があったことを知った日=被相続人が死亡した日となっています)。ただし、「災害、その他やむを得ない理由」がある場合については、申請により期限の延長が認められるようになっています。この「やむを得ない理由」には、新型コロナウイルスなどの感染症による影響も含まれます。

延長期限は「やむを得ない理由」が無くなった日から2ヶ月以内とされており、書面で申請する場合には右上の余白部分に「新型コロナウイルスによる申告・納付期限延長申請」という文言の記入を行えば良いことになっています。

また、年の途中で亡くなった方の確定申告である「準確定申告」についても、新型コロナウイルスの影響がある場合には延長が認められます。準確定申告は相続人が行いますが、通常は相続開始があったことを知った日から4ヶ月以内の申告・納税を行います

延長を希望する場合には、申告書を作成する際に、右上の余白部分に「新型コロナウイルスによる申告・納付期限延長申請」という文言を記入して提出を行います。

路線価の調整率が適応されるように

国税庁では令和2年分の路線価公表時に新型コロナウイルス感染症による地価への影響を配慮し、「令和2年1月1日時点の地価と比較した際に20%以上下落し、路線価等が時価を上回る状況が広い範囲で見られる場合には、令和2年分の路線価の補正などを検討する」としていました。

令和2年1月から6月に関しては、路線価等が時価を上回る状況が確認されなかったことから路線価等の補正は行われていません。

しかし令和2年7月から9月までの間に大阪中央区の3つの地域において、また令和2年10月から12月の期間に大阪中央区の13地域において路線価が時価を上回る状況が確認されています。

このことから該当する期間に相続等によって土地等を相続などにより取得した場合には、路線価に地価変動補正率を乗じた価額に基づいて土地等の評価額が算出されることとされています。

この時に使用される地価変動補正率や該当する地域については、国税庁のホームページで確認することができます。

必要書類の入手や相続の手続きが郵送中心に

新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止の観点から、相続に関する手続きにも変化が生じています。相続が発生した際の手続きなどは専門家に相談し、対面で話を進めていくことが一般的となっていましたが、現在では郵送やメールによる書類のやりとりなどで行えるというケースが増えています(印鑑証明書の取得など一部本人が役所の窓口に足を運ぶ必要があるものもあります)。

相続のオンライン相談の増加

また相続に関する相談をしたい、という場合にもオンライン相談に対応しているという法律事務所も増えています。LINEやZOOMなどを使用したオンライン相談であれば、パソコンやWebカメラがなかったとしても普段使っているタブレットやスマートフォンを使用した相談が可能となりますので、相続についてわからないことがある、手続きについて相談したいと言った場合に気軽に利用することができるでしょう。

遺産分割に関わる新ルール

2019年7月1日より、改正民法(相続法)が本格的に施行されています。これはおよそ40年ぶりの大きな改正となっており、例えば残された配偶者がこれからの生活について不安なく暮らしていけるようにするための方策などが導入されています。どのような改正があったのかをいくつかご紹介します。

預金の仮払い制度

2019年7月1日より、「預貯金の仮払い制度」の適用が開始しました。この制度により、遺言がなく遺産分割協議が整う前でも、法定相続人が被相続人名義の預貯金を一定額まで引き出せるようになりました

人が亡くなった場合、その人の名義の預金口座は凍結され、出金や振込が一切行えなくなります。これは不正な出金などを防ぐための対応ですが、この対応によって葬儀費用などの用意が難しくなるケースや、被相続人に生活費を頼っていた相続人が生活を営むのが難しくなるといった問題が発生していました。そのため、法律の改正によって一定額までであれば遺産分割前でも出金が行える、としています。

出金できる金額は、「死亡時の口座残高の1/3に、相続人の法定相続分を乗じた金額」または「150万円」いずれかの低い方が上限となります。さらに、この条件は金融機関ごとに適用されます。

ただし、注意点としてこの預貯金の仮払い制度を利用すると相続放棄できなくなる可能性があるという点が挙げられます。また、ほかの相続人とトラブルにならないよう、慎重に利用することが大切といえます。

相続人以外の親族の「特別の寄与」

また、法律の改正によって相続人以外の親族についても「特別寄与料」が認められるようになりました。この「特別寄与料」とは、被相続人の財産維持や増加に貢献し、無償で介護などを行っていた相続人以外の一定の親族に認められる遺産の取得分を指しています

例えば、長男の配偶者や相続権を持たない孫などが献身的に被相続人の介護を行っていたり、被相続人が行っていた事業を無給で手伝ったりしていた場合などが該当します。このようなケースでは、これまでは遺産を受け取る権利は認められていませんでしたが、改正により一定範囲の親族(「6親等以内の血族」と「3親等以内の姻族」)に対して特別寄与料を請求できることになりました。ただし、有償の場合には特別寄与料は認められない点には注意が必要です。

特別寄与料の請求を行う場合には、相続が開始された後に相続人に対して請求を行います。請求が認められた場合には、法定相続分に応じて相続人が原則として金銭で支払うことになります。

配偶者居住権と贈与された自宅の取り扱い

社会情勢の大きな変化を受けて相続法に関する改正審議が行われ、2019年7月1日より改正相続法が施行されています。その中では、高齢化が進み平均寿命が伸びたことから、被相続人死亡後も配偶者が長期にわたって同一住居で生活を続けられる「配偶者居住権」が設けられています。

配偶者居住権とは建物の価値を「所有権」と「居住権」に分け、残された配偶者がたとえ所有権を持っていない場合でも、一定条件のもとで居住権を取得することで、その建物に住み続けられるようにするためのものです。

配偶者居住権が成立するためには、「残された配偶者が、亡くなった人の法律上の配偶者であること」「配偶者が亡くなった人が所有していた建物に、亡くなった時に居住していたこと」などの要件を満たすことが必要です。

また、配偶者に対し自宅などの居住不動産の贈与をした場合の特例についても定められています。

これは、婚姻期間が20年以上の夫婦が、配偶者に対して居住不動産を遺贈または贈与(死因贈与を含む)した場合には、「遺産の分割において特別受益としない」という意思表示をしたと推定する規定が新設されています。

このことから、生前に配偶者から贈与された自宅については特別受益とみなされないため、相続時に遺産分割の対象から除外できる、ということになっています。ただし、2019年7月1日以降に贈与が行われたもののみが対象となります。

遺留分侵害額の金銭請求

不公平な遺言や贈与が行われた際に、「法定相続人が遺産を相続できない」または「遺留分に満たない割合しか遺産の相続ができない」といった状況が発生することがあります(遺留分=兄弟姉妹以外の法定相続人に認められる最低限の遺産取得割合)。

このような場合、遺産を受け取ったほかの法定相続人などに対し、遺留分の権利を主張することによって請求が行える場合があります。

民法の改正によって2019年7月1日以降に開始した相続については、「遺留分侵害額請求」という制度が適用されます。このことにより遺留分権利者の権利が金銭債権化され、金銭での清算が行われることになりました。

これまでは現物返還が原則となっていたことから不動産などの分けられないものについては共有状態となっていましたが、改正によって遺産を共有することがなくなり、トラブルを避けられます。

ただしいくつか注意点があります。

まず、遺留分の算定を行う場合の考え方として遺産総額に含める生計の資本などに代わる贈与は「相続開始前10年以内のものに限られる」という点があります。

さらに、遺留分侵害額の請求は、「相続開始または遺留分の侵害があったと知った日から1年以内」となっています。

ただし、請求を行うことによって権利が守られることから、1年以内に遺留分の侵害額の支払いを終了させる必要はありません。

相続登記の義務化

2024年4月1日より、相続登記の義務化が始まる見込みとなっています。これは所有者不明土地の問題に対応することを目的としているもの。どのような内容となっているのか簡単にご紹介します。

個人が相続で不動産を取得した場合

2024年4月1日以降、故人から不動産を相続した場合には相続登記が必要となります。これまでは相続登記には申請義務がなかったことから、相続登記の申請期限は設けられていませんでした。

しかし相続登記が義務化されることによって「相続により不動産の取得を知った日から3年以内」に相続登記を行う必要があります。

もし相続登記を行わなかった場合には、10万円以下の過料の対象となりますが、遺言などによる遺贈(相続人に対する遺贈)によって所有権を取得した場合にも対象となります。

また、相続登記義務化は法改正前から相続登記をしていない不動産についても適用があるという点にも注意が必要となります。

登記後に住所・氏名の変更があった場合

また、登記上の所有者の住所や氏名などに変更があった場合にも変更登記が義務化されることになります。所有者の氏名や住所、名称に変更が生じた場合には、「その変更があった日から2年以内」に変更登記の手続きを行う必要があります。これに違反した場合には、5万円以下の過料の対象となります。

また、相続登記の義務かと同様に、法改正以前から住所などの変更登記を行っていない不動産に対しても適用があることに注意が必要となります。

まとめ

相続法の改正や、近年の相続手続きなどに関する変化などをまとめてきました。特に相続法については40年ぶりの大きな改正が行われたこともあり、相続の手続きを行わなければならなくなった方にとっては押さえておきたい様々なポイントがあるといえるでしょう。

しかし、相続の手続きは非常に複雑になることも多く、手続き自体どのように進めていくべきかわからないという場合も多くあります。そのような時には専門家に相談することがおすすめです。心強いサポートを受けられますので、ぜひ信頼できる相談先をみつけ、わからないことや心配ごとを解消しながら手続きを進めていきましょう。

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