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遺言書が複数出てきたらどうする?

遺言書が見つかったあとに、別の日付の遺言書がもう1通出てくるケースがあります。遺言書は何度でも書き直せるため、複数の遺言書が存在しても直ちに問題になるわけではありませんが、内容が食い違う場合には、どれを使うのかを整理する必要があります。本記事では、複数ある遺言書の優先順位の決め方をはじめ、自分で実家の名義変更(相続登記)を進める際の判断基準や、手続きで注意したい点を、第三者の視点で解説します。

複数の遺言書がある場合の基本ルール

複数の遺言書が見つかった場合の考え方は、民法に定められています。ここでは、どの遺言書が優先されるのかという基本ルールと、内容が重なる場合や食い違う場合の扱いを順に確認します。まず押さえておきたいのは、遺言書の形式ではなく、日付が判断の軸になる点です。

原則は「日付が新しい遺言書」が優先(民法1023条)

遺言書は、遺言者がいつでも、何度でも書き直すことができます(民法第1022条)。そのため、複数の遺言書の内容が食い違う場合は、作成日が後の遺言書の内容が有効となり、前の遺言書の食い違う部分は撤回したものとみなされます(民法第1023条第1項)。これは、遺言者の最後の意思を尊重するという考え方に基づくルールです。たとえば、「公正証書遺言(2018年)」と「自筆の手書き遺言(2022年)」の二つがある場合、遺言書の形式に関わらず、日付の新しい「自筆の手書き遺言(2022年)」が優先されます。

内容が重複・矛盾していない部分は「両方有効」

古い遺言書に「実家は長男へ」、新しい遺言書に「預貯金は次男へ」と書かれている場合、二つの内容は矛盾しないため、どちらの遺言書も有効となり、互いに補い合う関係になります。一方、古い遺言書に「実家は長男へ」、新しい遺言書に「実家は次男へ」と書かれている場合は、内容が矛盾する「実家」の部分だけが、新しい遺言書によって撤回されたものとして扱われます。このとき、古い遺言書のうち矛盾しない部分は、引き続き効力を持ちます。

どの遺言書を使えばいい?判断のポイント

複数の遺言書が見つかった場合、実際にどの遺言書を使うのかは、遺言書の状況によって整理の仕方が変わります。ここでは、よくある三つのパターンごとに、判断のポイントを確認します。それぞれの扱いを順に見ていきます。

パターン①:日付が書かれていない遺言書がある

手書きの遺言書(自筆証書遺言)は、日付の記載がない場合、法律上の要件を満たさず無効とされています(民法第968条第1項)。そのため、日付の書かれていない遺言書が見つかっても、その内容は効力を持たず、日付の入った別の遺言書が有効であれば、そちらが優先されます。日付は「令和○年○月吉日」のように特定できない書き方でも、無効と判断される場合があるため、記載内容を丁寧に確認することが必要です。

パターン②:公正証書遺言と手書きの遺言書(自筆)が両方ある

公正証書遺言は、公証人が作成するため厳格な手続きを経ていますが、自筆の遺言書との優先関係を決めるのは、形式ではなく日付です。日付の新しい自筆の遺言書が有効であれば、公正証書遺言の矛盾する部分は撤回されたものとして扱われます。ただし、自筆の遺言書を使って手続きを進める場合には、家庭裁判所での「検認」が必要となります。法務局の保管制度を利用して預けられていた遺言書であれば検認は不要で、「遺言書情報証明書」の交付を受けて手続きに使用します。

パターン③:同じ日付の遺言書が複数ある

同じ日付の遺言書が複数あり、内容が食い違っている場合は、注意が必要です。作成された時間まで特定できず、どちらが後に書かれたのかを判断できないときは、矛盾する部分について、どちらの遺言も効力を生じないと扱われる可能性があります。ただし、内容に矛盾がなければ、どちらの遺言書も有効です。同じ日付でも、封筒や筆記具、保管状況などから先後が判断できる場合もあるため、個別の事情に応じた確認が求められます。

複数の遺言書を使って実家を名義変更する方法

複数の遺言書がある場合でも、内容が整理できれば、実家の名義変更(相続登記)を自分で進められるケースがあります。ここでは、自力で手続きできるケースと、法務局へ提出する書類で注意したい点を順に確認します。

自分で手続き(名義変更)できるケース

日付の新しい遺言書1通だけで「実家を〇〇に相続させる」という内容が完結しており、ほかの遺言書との矛盾がない場合は、自分で法務局へ登記を申請することが可能です。ただし、その遺言書が自宅で保管されていた自筆証書遺言であれば、家庭裁判所の検認が済んでいることが前提となります。法務局の保管制度を利用した遺言書であれば検認は不要で、遺言書情報証明書を用意します。

手続き時の提出書類に関する注意点

日付の新しい遺言書だけで登記の内容が完結している場合は、その遺言書(検認済みのもの、または遺言書情報証明書)を法務局へ提出するのが基本です。一方、古い遺言書の内容も一部有効で、二つの遺言書が補い合っている場合は、登記の根拠となる遺言書がそれぞれ異なるため、両方の遺言書を、検認済証明書などとあわせて法務局に提出する必要が生じる場合があります。

自分で手続きする際のおとしあな・トラブル

遺言書が複数ある場合は、手続きの進め方や相続人同士の関係で、思わぬ問題が生じることがあります。ここでは、自分で手続きを進める際に注意したい代表的な二つの点を紹介します。事前に知っておくことで、トラブルを避けやすくなります。

家庭裁判所の検認は「すべての遺言書」が必要になる

自宅で見つかった手書きの遺言書(自筆証書遺言)は、発見した相続人などが、遅滞なく家庭裁判所に提出して検認を請求する必要があるとされています(民法第1004条第1項)。遺言書が複数ある場合も同様で、見つかった遺言書はいずれも検認の対象となります。自分に有利な、または日付の新しい1通だけを選んで提出することは、適切な手続きとはいえません。

他の相続人とのトラブル(認知症や偽造の疑い)

「新しい方の遺言書は、親が認知症のときに無理やり書かされたのではないか」と、ほかの兄弟姉妹から疑われるケースがあります。遺言は、遺言をする時に遺言能力があることが必要とされており(民法第963条)、遺言書の有効性に疑いが生じると、遺言無効の確認を求める調停や訴訟に発展することもあります。こうした争いが生じると、自力での名義変更は一気に難しくなります。

まとめ:基本は「日付の新しい遺言書」。迷ったときは専門家への相談も

複数の遺言書が見つかった場合の基本は、日付の新しい遺言書が優先されるというルールです。まずは、すべての遺言書の日付を確認し、日付が抜けているものがないかを整理することが出発点になります。内容が矛盾しない部分は複数の遺言書が両方有効となり、矛盾する部分だけが新しい遺言書で上書きされます。自宅で見つかった自筆の遺言書は検認が必要で、遺言書が複数ある場合は、見つかったものを全て家庭裁判所に提出します。ただし、矛盾の見極めや法的な解釈、同じ日付の遺言書の扱い、遺言能力への疑いなど、判断が難しい場面では、司法書士や弁護士といった専門家に相談する方法があります。

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